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人間がそれを支えている。逆に言えば、この「流れ」をシステム化することができれば、大幅な効率向上が期待できることになる。
「孤立したシステム化」の第二の問題点は、孤立して作られたシステムをただ集めただけでは、ほとんどの場合、業務全体の「ネットワーク」の統合は実現できないことである。各業務に必要とされるものだけを考えてできたシステムはそれぞれに異なったデータ仕様を持っており、互いの情報交換のことが考慮されていないことが多い。さてここで、データ仕様が異なっているというのは、単に物理的にデータの形式等が合っていないということ以上に、より本質的には、それぞれのシステム間でコンピュータに分かるレベルで知識が共有されていないことを意味する。つまり、人間は大変賢いので、異なったシステムそれぞれが受発信する情報を、それぞれの定義が少々曖昧でも、適当に繋いで(「リンク」させて)意味ある結果を出すことが出来る。しかしコンピュータは融通が利かないから、それが扱うべき情報の型つまりは知識の表現形式をきっちり定義してやらねば、そのような異種システム間での効率的な「リンク」を実現することは不可能となる。
すなわち、組立産業におけるシステム統合の問題点の基本は、突き詰めると異なったシステム間の知識の共有問題にあるといえる。この知識共有問題を解決するために、まず製品及び生産プロセスの概念をモデルとして定義する必要があり、そしてこの概念の定義をすべての関連するシステムの間で共有しなければならない。このような問題を扱うために1980年代末、知識表現としてオントロジ(Ontology:ものの定義とその関係の定義の集合)の概念が導入された。GPMEは組立産業のオントロジを構築して知識共有問題を克服しひいてはCIM実現をしようとするものである(オントロジについては3.3節でより詳しく説明する)。
(2)プロダクトモデル
組立産業において業務全体をカバーしてシステムを統合しCIMを実現するためのもう一つのキーワードはプロダクトモデルである。すなわち、組立産業におけるCIM化のためには、設計から生産に至る各業務のプロセスそのものと、それらの業務が対象としている製品の情報が、融合化・統合化された形でコンピュータ上に表現されなければならない。本開発研究に先立って5年間にわたって実施された「造船業CIM開発研究」において、プロダクト(製品)及びプロセス(生産過程)のモデル化がCIM実現のため最も重要であると認識された。
CIMを可能にするプロダクト/プロセスモデルとは、設計・生産・製品情報として十分詳しい情報レベルで、製品そのものの形状・属性だけでなく、その製造の各過程の業務・工程をも表現したものである。すなわち、製品そのもののプロダクト情報だけでなく、機能設計や生産設計、日程や工程・物流管理のための情報など、企業の生産活動そのものを直接記

 

 

 

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